物の見かた 遠目・近目
私は元来おっちょこちょいなうえに、野次馬根性が旺盛で熱くなるのは、これは江戸っ子を任じていた父親譲りなのでしょう。 そこで少し物事を静かに見つめるために色々な方々の文を読ませて頂いていますが、特にこの方の文書から私は強い影響力を受けています。 毎週北国新聞の生活コラム欄に、曽野綾子さんの記事が連載されていて、最近話題になった事柄を独特の視線で書かれています。 この方は作家であり、クリスチャンであり、ボランテア団体の日本財団会長と幅広く活躍をされている方ですが、物事の捉え方に柔軟性と色々な角度から眺める冷静さ、何者にも媚びない意思、人に強要しない論理と独特の歴史観、そしてちょっぴり、スパイスの効いた洒脱な文章。それらのすべてに物事の見方を多方面から捉える感性を学ばせてもらっています。 しかも作家では珍しい土木屋さんの世界に詳しい方です。 何事も現場主義。先ず現地に行き確かめ、肌で感じ、歴史の重みを分析しながら未来の志向に思いを馳せて語りかけた骨太の作風です。『無名の碑』・『湖水誕生』・『地を潤すもの』など土木工事をテーマにした著書が数多く有り、"土木屋さん頑張りなさい"と応援してくれています。 曽野綾子さんは、「公共工事が税金の無駄使いと痛烈に批判されていますが、今日の経済の根幹を造ったのは土木である」と語っています。 土木屋さんは世渡り下手で寡黙な事、まるで歌の世界でいう河島英五の時代遅れを地で行っているようです。この体質は長年請負というしがらみから出た忍従から生まれた要素が影響しているように思います また、土木工事は自然破壊とよく言われますが、原始の自然の中で生きることは困難です。自然と何処で折り合い、調和するか、これが一般社会の人達には理解されにくく、誤解を受けやすいのではないかと思います。 土木工事は皆に使い込まれて、その効用は見過ごされていますが、作り手の側はそれが喜びでした。謙虚さゆえに見過ごされがちだった土木という世界を自ら宣伝し、世の人々に正しく理解していただき、応援してもらうように一歩、前へ踏み出しましょう。 |
2003年 梅雨 三友工業株式会社 落合 外吉